大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ツ)102号 判決

借地法第十条は借地権の目的たる土地の上にある建物を第三者が取得したがその敷地の賃貸人が借地権の譲渡又は転貸を承諾しない場合において建物を取得した第三者の利益を保護すると共に当該建物の収去等による社会経済上の損失を避けるために右の第三者に敷地の賃貸人に対する建物買取請求権を与えたものであつて、建物の従前の所有者すなわち敷地の従前の賃借人はかかる買取請求権を有しないことは同法条の明文に徴し明らかである。上告人等は、土地の賃借人が借地上に所有する数棟の建物の内一棟を第三者に譲渡したがその敷地部分に対する賃借権の譲渡につき土地賃貸人の承諾を得られなかつたために賃借土地全部につき賃貸借契約が解除せられた場合余の建物につき右借地人に買取請求権がないとするのは借地法第十条の法意に反するのであつて、このことは右借地人が残余の建物をも第三者に譲渡した場合にその建物譲受人が買取請求権を有することからみても明らかであるというけれども、建物の譲渡があつた場合とない場合とでは当事者間の法律干係を異にし右法条の適用上同一に論ずるを得ないのみならず、右の如き場合に所論の如く従前の建物所有者に同法条に定める買取請求権があるものと解すべき合理的理由を見出すことはできない。本件において上告人吉田は被上告人から(ロ)の土地を賃借しその地上に(い)の建物の一部と(ろ)の建物を所有していたところ(い)の建物を上告人関口に譲渡し(ロ)の土地のうちその建物の敷地部分を無断譲渡したためにそのことを理由に(ロ)の土地全部につき賃貸借契約が解除せられたというのであつて、(ろ)の建物につき譲渡がなされた場合ではないから同建物につき上告人吉田が借地法第十条所定の買取請求権を取得すべき理由のないことは前記説明に徴し明らかである。又上告人関口が、仮に(ろ)の建物について賃借権を有するとするも、その建物の敷地の所有者である被上告人に対する干係においてその敷地を占有しうべき正当の権原があるものとなし得ないことはさきに説明した通りである。上告人等は上告人吉田に同建物の買取請求権があることを前提としこのような場合には上告人関口の右建物賃借権を以て被上告人に対抗できると解すべきであるというけれども、前段説明の通り上告人吉田の買取請求権を認むることができない以上、右の所論もまた採用し得ないことはいうまでもない。原判決には何等法令の解釈適用を誤つた点はない。論旨は理由がない。

(奥田 岸上 下関)

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